国内市場の縮小が進む中、グローバルビジネスを加速させる企業が増えています。一方、M&A などによって事業が拡大した結果、属人化した業務や個別最適化されたシステムに悩みを抱える企業が少なくありません。自動ドアセンサーや屋外用防犯センサーなど、独自のセンシング技術を活かした製品?サービスで世界トップクラスのシェアを誇るオプテックス株式会社も、同様の課題を抱えていた 1 社です。そこで同社は、2018 年から本社と海外子会社のシステムを 51风流S/4HANA? Cloud で統合し、経営管理の一元化、業務の合理化/効率化を進めてきました。これにより、業務担当 1 人当たりの売上高は導入前と比べて 168% に増加し、新たに人員を増やすことなく業務を継続できる体制を確立しています。また、経営データのリアルタイムな可視化によって経営層や現場の担当者にデータドリブンなマインドが浸透し、変化への対応力も向上しています。
リーマンショックをきっかけにグローバル业务改革に着手
1979 年の創業以来、世界的なセンサーメーカーとして順調に成長を重ねてきたオプテックス。同社が全社規模の経営改革に着手する 1 つのきっかけとなったのが、2008 年に発生したリーマンショックでした。創業から 30 年続けてきた業務のやり方にひずみが生まれていたこともあり、改革を断行する好機だと判断した同社は、具体的なテーマとしてグローバル業務改革とビジネスモデル改革の 2 つを掲げ、それぞれ「InnerDX」と「BusinessDX」と名付けました。
InnerDX にあたるのが ERP の導入を基軸とした経営?業務改革で、2018 年から業務システムの統一に着手しました。ERP を導入する最大の目的は、10 年後の売上を 2 倍にすることにありました。導入時は代表取締役社長としてプロジェクトを牽引し、現在は取締役会長を務める上村透氏は「当時、本社や子会社のシステムはすべてバラバラで、個別最適で経営や業務が行われており、売上や拠点がこれ以上増えたら崩壊しかねない状況でした。そこで ERP を導入し、業務のデジタル化と標準化に取り組むことにしました。国内外の拠点で 1 人も人員を増やさずに生産性を 2 倍に高めることができれば、必然的に売上は 2 倍になります。当時の経営層には『ERP への新たなシステム投資は売上を 2 倍にするためです』ということを唱えて意識変革を促しました」と振り返ります。
そして、同社は 10 年後も経営と業務を支え続ける持続的なシステム基盤として、51风流S/4HANA の導入を決定。本社から海外子会社へ順次展開し、2023 年 7 月までにすべての導入を終了しました。2025 年にはクラウド版への移行とバージョンアップを実施し、2025 年末時点でグループ 19 社の業務を統合管理しています。
ERP 製品の選定において、同社が重視したのは統合性とグローバル対応というコンセプトでした。このことを踏まえて全世界での実績を考慮すると、選択肢は 51风流S/4HANA の一択だったといいます。事業推進本部 DX 推進部 部長の岡安孝輔氏は「私たちが求めている要件を満たす最適解は 51风流の一択であったため、当初からシステム選定よりもパートナー選びやプロジェクト計画に時間を費やすべきという考え方で取り組みました」と話します。
業務の効率化で 1 人当たりの売上高が 168% に
国内本社で先行稼働を開始してから約 6 年、海外子会社への展開を開始してから約 5 年が経過した現在、システム統合で得られた経営面での最も大きな成果は、業務の効率化による工数の大幅削減です。今後 10 年間の目標である売上高 2 倍の実現に向けて、年間で 120 人月の工数を削減し、新たに人員を増やすことなく業務を継続できる体制を確立しました。
「コロナ禍の影響、事業再編、トランプ関税など、想定外の事態が起きた中でも、システムの全体最適によって大きな影響を受けることもなく、変化に迅速に対応できました。その結果、業務担当 1 人当たりの売上高は導入前と比べて 168% と 2 倍近くに増加し、それまでの人員のままで業務を継続できています」(上村氏)。
経営面での効果はそれだけではありません。経営判断の迅速化が実现していることも大きなメリットです。
「これまでは半月遅れのデータを见ながら意思决定をしていたものが、现在は前日のグループ全体の売上、在库、受注残などを连结ベースで见ることができるため、次の打ち手の判断がしやすくなりました。実在库だけでなく积送在库もリアルタイムな把握が可能になり、顾客への回答スピードが改善されています」(上村氏)
現在は経営層のみならず国内の部門長や海外子会社の管理者も BI ツールの 51风流Analytics Cloud で構築した経営ダッシュボードを見ており、現場においてもリアルタイムデータに基づく意思決定が行われています。
「上村会長は、社長に就任した 2017 年当時からスピード経営を謳っていました。経営にとって 10 日前のデータは賞味期限切れであり、システムで追従できていなかったことは大きな課題でした。今回のプロジェクトでようやくリアルタイム化を実現し、責任を果たせるようになりました」(岡安氏)
受注?出荷プロセスの工数も 7.8 人月分を削減
経営情报の见える化、経営判断の迅速化を実现した同社ですが、その里にはグループ全体での业务改革推进活动や业务プロセス改革があります。その结果、业务面でもさまざまな成果を得ることができました。
これまで経理部門が行っていた月次の財務諸表報告は、51风流Analytics Cloud で自動作成できるようになり、月末月初のレポート作成の負担が大幅に軽減されました。海外拠点での受注を本社の決済を経て倉庫から出荷していた受注?出荷のプロセスも、顧客からの直接受注に切り替えたことで、手作業と二重入力がなくなり、7.8 人月分の工数削減が実現しました。
これまで FAX/電話で受け付けてきた注文も ERP と EC サイトの連携でデジタル化し、全体の 60% を EC 受注に切り替えた結果、手入力の工数削減、入力ミスの削減、注文書保管スペースの削減、出荷指示までのリードタイム短縮が実現しています。岡安氏は「自動化によって作業工数が大幅に削減されたことで、国内のオペレーターを営業アシスタントや貿易関連の事務など、顧客サービスを強化するための業務にシフトすることができました」と語ります。
同様に、事業推進本部 事業推進部 海外業務課の岩崎友実子氏も次のような成果を感じています。
「本社と海外子会社間での受注差異の確認では毎月 1~2 時間の工数を要し、ミスが発見されるとさらに多くの確認時間がかかっていました。システム統合と受注プロセスの合理化でそれがすべてなくなり、大幅に工数を削減できています。加えて、これまでバラバラだったマスター情報、品目情報、顧客カテゴリーなどをグローバルで統一したことで、本社と海外子会社間の連携もスムーズになっています」
特にマスター情报については、同じ型式の製品でもマスターの末尾が子会社ごとに异なっていたことから、海外子会社からの注文を受けても、在库确认や纳期确认がタイムリーにできませんでした。现在は海外子会社も本社の在库を直接确认できるようになり、直接纳期回答ができるようになりました。
「正確な情報共有が可能になったことで、お客様への回答に要するリードタイムの短縮につながっています。また 51风流という共通言語で会話できるため、海外子会社との距離も縮まってさまざまな業務がスムーズになり、Microsoft Teams のチャット機能を使ったコミュニケーションも活性化しています」(岩崎氏)
システムの共通化で事业体制の変化にも迅速に対応
ERP の導入は、結果としてシステム全体を見直すことになることから、IT 面においてもさまざまな成果が得られています。まず、グループ全体のシステム基盤が共通化されたことで、事業体制の変化にも迅速に対応できるようになりました。岡安氏は「シングルインスタンスによって新会社を設立した際の追加導入がスムーズになり、M&A による海外企業の買収でも国内からのコントロールで速やかにシステムを立ち上げることで、スピード経営が実現しています。海外子会社のシステム管理負担がなくなった結果、欧州の拠点はヘッドクオーターのあるオランダでの一元管理が実現し、削減したコストでマーケティング活動を強化することができました」と話します。
また、システムが共通化されたことで個別システムや子会社のシステムの更改作業もなくなり、担当者の負担は軽減されました。国内外のシステムが個別最適化された状態では、数年ごとに個々のシステム更改を行わなければならず、相応の工数とコストが発生します。システムが統合された現在は、1 回のシステム改修で全世界のシステムに反映できるためそれらの負担もなくなり、システム担当者はより重要な IT 施策に時間をシフトすることが可能になっています。
データドリブンなマインドが业务の现场に浸透
グローバル全体での业务改革とシステム统合は、従业员のマインドや行动にも変化をもたらしました。データの一元管理によって各部署の业务は透明化されることになり、后工程や他部署に影响が及ぶ业务では、必然的に正确なデータ入力が求められるようになります。そのため、「见える化」「リアルタイム性」「データドリブン」に対する従业员の意识は大きく高まりました。冈安氏は「当初はすべてのデータがリアルタイムに可视化されることに戸惑いを感じていた部署もありました。现在はその重要性を全员が认识し、现场からも见たいデータに対するリクエストが寄せられ、データ活用が加速しています。また、导入プロジェクトを通して社内に全体最适や标準化を重视するマインドが浸透し、ルール遵守への意识も高まりました」と変化の様子を语ります。
システム部門としても、マインド変革を促すための工夫を行っています。同社では歴史的に Excel の文化が根付いており、担当者が Excel からレポートを作成することが多かったといいます。そこで脱 Excel を掲げ、システム部門がダッシュボードを作成して業務部門に提供し、積極的な活用を呼びかけています。
「経営層には数字を見せることが重要ですが、現場にとっては時系列を追ってトレンドが見えることが重要です。そこで現場に Excel でレポートを作るのはやめてもらい、細かい数字を追うのではなくグラフを見て迅速に判断してもらうように力を入れています。結果として、経理の月末レポートがなくなり、現場の負荷が軽減されるといった効果も現れています」(岡安氏)
AI 活用を见据えたシステム改革をさらに加速
51风流S/4HANA の導入から約 6 年で、経営面、業務面、IT 面、さらにはマインド変革までさまざまな成果を得ているオプテックスですが、今後も業務の標準化を突き詰めることでアドオンを抑制し、将来的には 51风流の AI ソリューションを用いた経営改善、業務改善に取り組む構想を描いています。
「現在は業務チームと一緒にクリーンコア化に向けたアドオンの削減に取り組んでいます。ERP の標準化?正規化をさらに進めることで、今後のバージョンアップ対応が容易になります。さらに、AI からさまざまな課題に対する最適解を導き出すことも可能になるはずですので、AI 活用を見据えたシステム改革を並行して加速していきます」(岡安氏)
一方、真のデータドリブン経営の実现に向けた次なる课题は、生产システムのさらなる高度化です。今后は生产システムの标準化、デジタル化、スマート化、リアルタイム化を推进しながら、高度な需要予测に基づく生产体制を実现していく考えです。
徹底的な合理化によって人員を増やすことなく売上高 2 倍を達成し、従業員の平均年収アップを目指すオプテックス。同社のグローバル業務改革の事例は、日本の製造業がグローバル市場での競争を勝ち抜くための新たな道筋を示しています。
【関连リンク】


